峠を越えて
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2013年2月22日(金)晴れ
「トド&アシカ新聞」をお送りすると必ず返事を
くださる方がいる。
返事には新聞の感想や自分たちのふだんの生活の
ことが書かれている。学生時代の友人の母上なんですが、今じゃ
友人とはロクに話すこともないのに。
その友人の母上からご主人が亡くなられたとの知らせが届いた。
まだオートバイも入手できなかった学生の頃、東海・山陽道をヒッチ
ハイクで、何回か帰省したことがある。Tシャツ、Gパンに下駄。
眠るのは移動している車の助手席か公園のベンチ。旅程の半分くらい
のところにある友人の実家に寄った。
友人は「美大なんかに行く息子は勘当だ」と言われ、本当に2年ほど
勘当されていたらしい。その親父さんもにこやかに迎えてくれた。
親父さんは関東の寒村の生まれ。村はずれの峠を越え、出て行った
飛び抜けた秀才が二人いて、最初の若者の名前はナカソネで二人目は
自分だ。という伝説を持つ・・・と友人から聞いた。
某巨大企業の重役なんだが、ヒッチハイクの旅を面白そうに
喜んでくれた。「そうだ、酒を飲もう」と書斎に案内され、生まれて
初めて書斎なるものを見た。重厚感ある机に皮のソファー。
コニャックの入ったグラスを手にふり返るとクロフツがあった。
しかも全巻揃っている。なるほど、ブランデーを片手にミステリを
読むのがお好きらしい。
「クロフツの『樽』つまんなくないですか」
「もっと面白いミステリいっぱいあるのに、なんでクロフツ」
と失礼な言葉にも、その先に何を言うのかと面白そうに目を細める。
くどくどとミステリやSFに話しを広げながら
『ボクもゼッタイこんな書斎やミステリやブランデーに埋もれるのだ』
『ゼッタイこんな大人になるのだ』と決心した。
実際にはそんな生活とは全く縁がなかったし、ブランデーも似合わん
おっさんになってしまったけど・・・と、いつだったか友人の母上へ
の手紙に書いたら、返事に
「おやおや、そんな時代があったような気もしますが、宅の主人も
今や、焼酎のお湯割りにせいぜい週刊誌を読むくらいですよ」と
あった。
たった一度お会いしただけだけど、折りにふれ思いだす印象的な
「大人の男」でした。
心より、ご冥福を祈ります。ありがとうございました。
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