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おひけぇなすって

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2010年2月2日(火)晴れ、くもり

199X年5月、新婚旅行で五島列島に行った。・・・昔の話である。
その帰り長崎で一泊し、次の日は路面電車に乗り、オランダ坂からグラ
バー邸の方に歩いた。
Glover_2

グラバー邸行ってみる?と聞くとアシカは初々しくこくりと頷いた。
こっちかなと角を曲がったエントランスでびっくり!
なんと入り口の坂にエスカレータが付いていたのだ。屋外なのに。
こんくらいの坂にエスカレータとは何たる軟弱事かと文句言いながらも
乗ってみるのがトドなのである。朝早い時間なので我々の他は誰もいな
い。三段下がってついて来るアシカの方を向き、高校の修学旅行で来た
時にはみんなで「グラマー邸ならエエのになぁ」ってお決まりのバカを
言いながら歩いて登ったんだと話す。
ふと気づくと、アシカは肩越しに上を見て怪訝そうな顔をしている。

Escalator振り返るとエスカレータの
上に、こちらを向いている
かなり年配の、老人の顔が
見えた。徐々に肩が現れ、
胸、帯が見え、着物姿で
ほうきを手にしている。
庭の掃除をしていたらしい
が、一般人にしては眼光
鋭く色浅黒く、筋肉質の
締まった体つきで、キモノ
つぅか着流しってヤツで
ある。
そして、腰まで見えた時、やおらほうきを左手に持ち替え体の後ろに
隠すようにまわした。顔をこちらに向けたままわずかに上半身を折っ
た。右足を一歩前に出し、上体を前にかがめると右の手の平を上にし
て前に差し出している。
あれ? 何だっけあのポーズは? まさかね、まさか、アレかな?
振り向いてアシカにあのポーズってひょっとして「おひけぇなすって」
かなぁ? と聞く。
まさかね、どう思う? なんだってあんなコトしてるんだろ?
アシカは小首をかしげてただニコッと笑う。
再び振り向けば、さらに距離は縮まっていて、もう一度右手を前に出し、
こちらの目をのぞきこみながら手を左に流す。
なぜ流す?そんな流儀だったっけ? 考えている間もどんどん近づいて
いる。トドの頭の中はもうパニック状態である。
なぜだか知らないけどトドは長崎で、元ヤクザらしい老人に挨拶されて
いる・・らしい。狭いエスカレータで逃げ場はない。
刻々と近づくエスカレータの上で、福岡で頻発した発砲事件や小倉祭に
橋の上で出会った喧嘩相手を十数人で車ごと持ち上げ、大川に叩き込ん
だ新聞記事がチラチラと記憶から浮上してくる。
でも、ここは長崎、福岡ほどでは・・でも、江戸の仇は長崎で討たれる
んだったっけ。いや別に仇を討たれる覚えはないし、凶状持ちでもない。
ぐるぐると浮かんでくるバカな考えをねじ伏せ、ここは葛飾柴又の寅さ
んの映画を思い起こすことに集中する。
「手前ぇ生国とはっしますところ岡山でござんす」
「高梁川で産湯をつかい・・」こんな感じだったかなぁ?
いや、お互いに何度か「そちらこそ、おひけぇなすって」とか言わなきゃ
なんねぇかったような、あぁ、こんなことならもっと真面目に深作欣治の
広島抗争映画を見とくんだった。ヤクザ映画はなんで嫌いだったんだろう。

パニくるトドの気持ちをよそにエスカレータは機械的にしゅるしゅると
終点に近づく。
もう残りは後3mほどしかない。老人は何度目かの「おひけぇなすって」
をリピートし始めた。
もうこれ以上は引き伸せない。郷に入れば郷に従えなのか。
こうなったら、ままよと同じように腰を落とし、右手を前に出し、ヒッシ
の思いで老人の目を正面からとらえた。
二人の目がガシッっと噛み合った途端、老人は下に目をそらした。
ナゼだ! 意外な行動に戸惑いながら、トドもつられて目線を追うと
老人の目線は自分の右手の方を見ており、その先には・・・

その先には・・・犬のフンがあった。
Sight
善良な老人がボランティアで朝の掃除をしていたら、エスカレータの
到着部に犬のフンを発見。片付ける間もなく観光客が上がって来たので
踏まないようにと親切に指差し、コースを左に取りなされと誘導して
くれていたらしい。しゃべれよぉ〜。

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